研究内容

 マイクロ波照射を利用した省エネルギー化学合成

当研究室では電子レンジなどのマイクロ波照射装置を用いて化学反応を行っています。マイクロ波加熱は、マイクロ波が物質内部に浸透し、分子の双極子を回転させることによる分子内摩擦によって起こります。この加熱方法は従来の熱伝導による加熱とは異なり、物質内部まで短時間で加熱できることから、加熱効率が良く省エネルギー性が高いことが知られています。当研究室ではグリーンケミストリーの観点からマイクロ波を利用することでエネルギー効率の高い合成法を確立することを目指しています。我々の研究グループでは、3官能性アルコキシシランをマイクロ波照射下で反応させることにより、短時間かつ高収率でかご型シルセスキオキサンを合成することに成功しました。





上記の研究については下記の論文をご覧下さい。
Simple and Rapid Eco-Friendly Synthesis of Cubic Octamethylsilsesquioxane Using Microwave Irradiation.
Takeru Iwamura, Kaoru Adachi, and Yoshiki Chujo*.
Chemistry Letters, 39, 354-355 (2010).  (About Chem. Lett.)


上記の研究に関連した文献ついては下記の論文をご覧下さい。
Novel Synthesis of Submicormeter Silica Spheres in Non-alcoholic Solvent by Microwave-assisted Sol-Gel Method.
Kaoru Adachi, Takeru Iwamura, and Yoshiki Chujo*.
Chemistry Letters, 33, 1504-1505 (2004).  (About Chem. Lett.)


Microwave Assisted Synthesis of Organic-Inorganic Polymer Hybrids.
Kaoru Adachi, Takeru Iwamura, and Yoshiki Chujo*.
Polymer Bulletin, 55, 309-315 (2005).  (About Polym. Bull.)

 マイクロ波照射を利用した重合反応および解重合反応に関する研究

マイクロ波の特性を利用し、エネルギー効率の高い重合法(省エネルギー的な重合法)を確立することで、有用な高分子材料を合成するのと同時に、リサイクル性を考慮し、合成した高分子材料の解重合および分解についての研究を行っています。近年では、アクリルアミドにマイクロ波を照射することで、ポリアミドの1種であるポリ(β-アラニン)を短時間かつ高収率で合成することができました。従来の加熱方式では6880Wの電力を必要とするのに対し、我々の方法は300Wと非常に少ない電力で合成することに成功しました。また、このようにして合成したポリマーを廃棄することも念頭において分解反応を試みました。その結果、3時間のマイクロ波照射でポリ(β-アラニン)を64-76%加水分解することができました。



上記の研究については下記の論文をご覧下さい。
Efficient and Eco-Friendly Anionic Polymerization of Acrylamide under Microwave Irradiation and Hydrolysis of the Obtained Polymers by Microwave Irradiation.
Takeru Iwamura*, Kazufumi Ashizawa, and Masato Sakaguchi.
Macromolecules, 42, 5001-5006 (2009).  (About Macromolecules)



・マイクロ波照射を利用した環境適合型ポリアミド系高分子の合成と加水分解
岩村 武*、芦沢一史、坂口眞人
日本接着学会誌, 46 (8), 301-307 (2010).




 ケミカルリサイクルを指向した機能性高分子の合成

高分子材料には機械的強度を付与するために、高分子鎖間に化学結合を形成させる、いわゆる架橋反応が用いられています。このような『架橋』は耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性などの特性を付与する場合にも利用されています。しかしながら、その一方で架橋を施した高分子材料は化学的に安定で難分解性になっていることからリサイクルの妨げになっています。当研究室では、可視光や圧力を加えるといった外部刺激を用いて解架橋が可能になる高分子材料の創製について検討を行っています。





上記の研究については下記の論文をご覧下さい。
A Novel Decrosslinking System from Crosslinked Polymer to Linear Polymer Utilizing Pressure or Visible Light Irradiation.
Takeru Iwamura*, and Masato Sakaguchi.
Macromolecules, 41, 8995-8999 (2008).  (About Macromolecules)



・Synthesis and Properties of De-cross-linkable Acrylate Polymers Based on Hexaarylbiimidazole.
Takeru Iwamura*, Saori Nakamura.
Polymer, 54, 4161-4170 (2013). (About Polymer)



 有機−無機ポリマーハイブリッドをはじめとする環境ナノ材料の創成

当研究室では有害化学物質の吸着・分解などの機能を有する材料の創製に取り組んでいます。その中でも有機高分子と無機酸化物とのナノレベルでの複合化により得られる有機−無機ハイブリッド材料に注目して研究を展開しています。特に、最近では茶葉抽出液を用いて有機−無機ハイブリッド材料を合成したところ、ミクロンオーダーの孔を多数有する新規マクロポーラス有機―無機ポリマーハイブリッドの合成に成功しました。




上記の研究については下記の論文をご覧下さい。
Formation of Macroporous Organic-Inorganic Polymer Hybrids using Tea Extract.
Takeru Iwamura*,and Masato Sakaguchi.
Journal of Applied Polymer Science, 122, 926-931 (2011). (About J. Appl. Polym. Sci.)

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